怒りの葡萄 第五章を読んでの感想

物語の本筋が始まる

五章では、一章で登場したであろう家族と土地の管理人代理の会話がメインです。

一章ででてきた家族というのは、厳しい天候のせいで自分たちが育てていたとうもろこしがみんなダメになってしまい、意気消沈していた人たちです。

ここでは明記されていないですが、おそらくトムの家族だと考えられます。

そんな意気消沈している家族のところに、土地保有の代理人が訪れます。

トムの家族は土地を借りて小作農をしていたが、トラクターなどの機械が普及したことによって、土地を追われてしまいます。

この本で描かれていることは、文明の発達によってこれまでの生活を奪われた人たちがどのように生きていったのかということだと思います。

誰が悪者かがわからない

土地保有者の代理人から、この土地から去るように言われたトムの家族ですが、前回の記事でも書いたようにわんぱくな人なので、そう簡単には受け入れません。

しまいには、自分たちを追いやろうとしているのは誰なのか、そいつを教えてくれれば殺してやる、と言い出します。

しかし、代理人は冷静に答えます。

それは自分にもわからない。

土地の所有者は銀行という組織であり、特定の誰かを指すものではない。

我々も銀行という組織の意思にしたがっているだけだ、と。

そう言われてしまうと、トムの家族も怒りのやり場がわからなくなってしまいます。

このような目には見えない巨大な力が今後もトムの家族を苦しめることになるのだろうと思いました。